思い込みが覆された瞬間


アイフォン画像

昨日、有限会社キートンの湯川代表が主催者となり私設勉強会が行われたので参加してきた。

テーマは『視覚障害者によるi-Phoneアクセシビリティ』である。

健常者の目線では気づかない事が多く、マニュアル作成、WEBサイト作成、読者、作業者、等々の目線を持つ中へ新たに視点を追加する事が出来た貴重な経験だ。

日本国内いや世界規模でi-Phoneがユーザー数を獲得している理由の1つに視覚障害者への配慮が有る。目の見えないものにとってボタン操作は元よりタッチパネルを使って機械を操作するなどは、屈辱的なことでありターゲットユーザーから完全にグレーアウトされたものと考えられる。

当初i-podには視覚障害者が使えるように配慮された機能は付いてい無かったと聞く。それに対して猛烈に反発したのがアメリカの視覚障害者団体で、なんとアップルを相手取って訴訟を起こしたのだ。

それに対するアップルが凄い。後継モデルのi-podシャッフルから視覚障害者向けの機能として『ボイスオーバー機能』を付加したのだ。 これはタッチパネルに指をタッチするとi-podから機械音声が流れ、それを頼りに視覚障害者が機械の操作を行うとお言うしくみだ。

今でも音声ガイダンス機能を組み込んだ機器は日本国内のメーカーからも沢山作られているが、特筆すべき点は他に有る。

i-podシャッフルの次に出したi-Phoneから採用したジェスチャー機能というものだ。これは数あるアプリの一つでは無く、OSに標準搭載されている機能で、簡単に言うとタッチパネルを指でワンタップ、ツータップ、スリータップ、とここまでは想像がつく。
次に指二本、三本でそれぞれタップする。更に指一本でタッチした後に、右へページをめくるようにハジく、指二本で渦を描くようにを捻るとかだ。詳しくは沢山のWEBサイトで紹介している。

視覚障害者は、このジェスチャーとボイスオーバーの搭載によりi-Phoneのサービスを健常者と同レベルで楽しむ事が出来る。今回、湯川氏の招聘により講師として参加してくださった視覚障害を持つ品川氏が実際に使いこなしているところを見せていただくと、その使いこなしっぷりは健常者よりも遥かに上をいくのではないか?と思われるほどである。 ネットリーダーを駆使してサイトを閲覧し、メールの送受信も行い、i-Tuneで音楽をダウンロードして、好きな楽曲を聴き、数多いi-アプリから面白いと思われる物をダウンロードしている。アプリの数は昨夜の主催者である湯川氏の5倍を超えており、氏も驚いていた様子だった。それだけ視覚障害者に配慮をした作りだと言う事なのだろう。

こりゃぁ、売れるわけだ。

“タッチパネルはビジュアルに訴えるもの”という思い込みが見事に覆された。(これはデジタル総研の戸塚さんからのコメントで記事のタイトルに使わせて貰ったように極めて同意だ)

聞けばグーグルのアンドロイド携帯は叩き売り状態でもi-Phoneの8分の1にも届かないらしく、ジェスチャーとボイスオーバー機能が少なからず影響有るように思う。とはいえ、天下のグーグルだからこのまま煮え湯を飲まされたままで終わるとは考え難く、今後の巻き返しも楽しみだ。

話がそれたが今回の勉強会で、世の中にあふれる製品は健常者だけが使う物ではないのだという事も頭に入れておこうと思った。

メーカーのWEBサイトで取扱説明書を一番多くダウンロードして活用しているのは視覚障害者だろう聞いたからだ。視覚障害を持つ人はダウンロードしたPDFマニュアルをそのまま読み上げ機能を使うか、テキストのみを抜き出して別の読み上げアプリを介して、内容を理解しようと努めているのだそうだ。従ってPDFマニュアルは視覚障害者にとって、製品の取り扱い情報を入手する上でかなり有効な手段と言える。

ただ、WEBサイトにアップしているPDFマニュアルはテキストや画像の抜き出しが出来ないように、セキュリティロックが設定されているので扱い辛いとも嘆いておられた。 (これはメーカーとして、改ざんや著作権の問題を考慮しての設定だと思われる)※

レイアウトによっては意味が分かりづらく、途中で諦めてしまう事も残念ながら有るのだそうだ。そう言う事を多少なりとも意識したか?という自問に対する自責の念に駆られる。何も少数派を過剰意識しなくてもいいのでは?目が見えないのだからイラストは意味無くね? それを全対応したからこそ今のアップルが有るのだろうし、こう言った事を念頭に置いてテクニカルドキュメントの作成を通じて社会貢献したいと考えている。

今回、このような場を設定し、お誘いくださった湯川氏にはこの場をお借りして感謝を申し上げます。

※PDFに関する著作権の問題では以前、弊社が作成したPDFマニュアルからテキストやイラストを無断で抜き出した上で、法外な価格で仕事を競り落とされた経験が有る。(マイナーチェンジモデルだった為にテキストとイラストなどの素材の多くは一部を訂正して使う事が出来た) データ抜き出して使いましたね?って問い詰めたら、していませんって言うので製版フィルムを出させて照合すると、イラスト内の一部のパスがあり得ない一致を見せた。こんな事も有ろうかと、予め施していたトリックが功を奏したのだった。(DTPが定着し始めの、もう随分前の話だが)

2010年3月17日
株式会社テクノアート 企画営業部
川内カツシ 『心で仕事する見た目とのギャップ営業』