3.11を地図で思うこと:宮本ヒデユキ

この地図を見て下さい。


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黄色く塗ってあるこの町の話をさせてもらおうと思います。

まず概要から。
東側は海に面していて、大きな海水浴場があるようです。西側はというと、ほとんど山ですね。西から東に向けて開けているようです。そして、JRと国道が南北に走っています。山に向かっていく国道もあります。町の中央には、駅と役場が見えています。
この辺りに人が集中して住んでいるのでしょうか。

この地図からは、あまり情報はくみとれませんが、どこにでもあるような、小さない田舎町でしょう。近くに大きな都市もなさそうですから、きっと、空気がよくて平和で過ごしやすいのんびりした所だと思います。

もう少し情報を引っ張り出してみると、住民は6500人ほどで、コンビニは2つしかありません。ダルマが町のマスコットのようで、ダルマ市にはダルマのゆるキャラが登場するそうです。名産品はというと、お米とほうれん草、地酒やお漬物なんかも有名だそうです。
さてこの町、いま現在人が住んでいません。どいうことか分かりますか?

勘がいい人なら分かったかもしれません。
そう、住民全員がこの町から避難しています。原発事故による放射線モレで、避難命令が下ったママということです。福島県の「双葉町」というのが、この町の名前です。
海に突き出した埋立地が見えると思うのですが、ここに福島第一原発があります。
1号機〜4号機はお隣の大熊町にあるのですが、5号機と6号機は双葉町にあります。
原発を抱えているこの双葉町と大熊町だけではなく、周辺の浪江町、相馬市、いわき市などにも、自分の家に帰ることができない人が、未だたくさんいます。
家があるのに帰ることができない虚しさや怒り、苛立ち、諦め、このような感情をいつまで持ち続けなければならないのでしょうか。本当にかわいそうでなりません。

毎年のことですが、私は年の瀬、家族のいる実家に帰省します。
毎度のことながら、何を土産に買ってかえろうか、帰って何をしゃべろうか、みんな変わりないかな、あれこれと、思いを巡らしているところです。
「帰る家がある。」「家族がまってくれている。」こんな当たり前のことを、特別に考えた1年はなかったかもしれません。今年は、日本にとっては悲しい悲しい1年でしたが、
くる年は、明るいニュースを世界にたくさん発信できる1年になってほしいと切に願うばかりです。

2011年12月24日
地図制作部 宮本ヒデユキ