2023年の記事を更新しました。
製品の取扱説明書やサービスマニュアルでは、文章だけでは伝えにくい構造や操作方法、作業手順を正確に伝える必要があります。そこで重要な役割を担うのがテクニカルイラストです。
テクニカルイラストは、単に製品をきれいに描くためのイラストではありません。製品の形状や構造、操作する箇所、部品同士の関係などを整理し、ユーザーが必要な情報を理解しやすい形に変換する技術図版です。
取扱説明書、整備マニュアル、組立説明書、施工説明書、パーツカタログなど、さまざまな技術資料で活用されています。
近年では2D図面や写真から作図する従来の方法に加え、3D CADデータを活用した制作も一般的になっています。本記事では、テクニカルイラストの役割や用途、分かりやすい図を制作するための考え方、3Dデータの活用について紹介します。
テクニカルイラストとは
テクニカルイラストとは、製品や機械、部品などの形状・構造・機能・操作方法を分かりやすく伝えるために制作する技術的なイラストです。
一般的なイラストが印象や雰囲気を伝えることを目的とする場合が多いのに対して、テクニカルイラストでは「正確に情報を伝えること」が重要になります。
実物をそのまま描くだけではなく、説明する内容に合わせて不要な部分を省略したり、重要な部分を強調したりすることもあります。

写真や一般的なイラストとの違い
写真は製品の実際の姿を正確に記録できますが、必ずしも説明に適しているとは限りません。
例えば、製品内部の部品、奥に隠れているネジ、取り外す部品、操作時に動かす部分などは、写真では分かりにくい場合があります。
テクニカルイラストでは、説明に必要な情報だけを残したり、見えない部分を表現したりすることで、「どこを見るべきか」「何を操作するのか」を明確にできます。
取扱説明書やマニュアルで使われる理由
製品マニュアルでは、ユーザーが文章を読みながら実際に製品を操作する場面があります。
文章だけで、
「レバーを手前に引きながら部品を上方向へ取り外してください」
と説明するよりも、対象となるレバーや部品、動かす方向を図で示した方が理解しやすくなります。
適切なテクニカルイラストを配置することで、操作方法の理解を助け、作業時の迷いや誤操作を減らすことにつながります。
テクニカルイラストの主な用途
テクニカルイラストは、製品に関するさまざまな技術資料で使用されています。
製品の操作・取扱説明図
家電製品、機械、工具、車両、設備などの取扱説明書では、ボタンやレバーの位置、部品の取り付け・取り外し、操作方向などを説明するために使用します。
矢印、番号、記号などを組み合わせることで、文章と図を対応させやすくすることも重要です。
分解図・構造説明図・パーツカタログ
複数の部品で構成される製品では、部品同士の位置関係を説明するために分解図( exploded view )が使用されます。
完成した製品を構成部品ごとに離して表現することで、
- どの部品がどこに取り付けられているのか
- どの順番で組み立てるのか
- 交換する部品がどれなのか
といった情報を視覚的に確認できます。
パーツカタログや整備資料などでも多く利用される表現方法です。
組立・施工・整備手順のイラスト
製品の組み立て、設備の施工、部品交換、点検・整備など、複数の工程を順番に説明する資料でもテクニカルイラストが使用されます。
1つの図に多くの情報を入れ過ぎるのではなく、必要に応じて工程を分割し、
作業前 → 操作 → 作業後
という流れが理解できるように構成します。
分かりやすいテクニカルイラストに必要なこと
テクニカルイラストでは、描画技術だけでなく、「何を伝えるための図なのか」を理解することが重要です。
ユーザー目線で情報を整理する
製品に詳しい担当者にとって当たり前のことでも、初めて製品を使用するユーザーには分からない場合があります。
そのため、
- ユーザーはどこを見るのか
- どの部品を操作するのか
- どの方向へ動かすのか
- どの順番で作業するのか
といった点を整理してから作図する必要があります。
テクニカルイラストは、設計情報をそのまま見せるのではなく、ユーザーが理解できる情報へ変換する役割も担っています。
視点・向き・描画範囲を統一する
複数のイラストを連続して使用する場合、製品を見る方向や角度が毎回大きく変わると、ユーザーが位置関係を把握しにくくなります。
作業手順を示す場合には、可能な範囲で視点や製品の向きを統一し、前後の図との関係が理解できるようにします。
反対に、特定の部品を見せるためには別角度の方が適している場合もあります。
何を説明するかによって最適な視点を選択することが重要です。
必要な情報を残し、不要な情報を省略する
製品のすべてを描き込めば分かりやすくなるとは限りません。
説明に関係のない部品や細かな形状まで表示すると、ユーザーが見るべき場所が分かりにくくなる場合があります。
そこで、目的に応じて、
省略する・簡略化する・強調する・拡大する
といった表現を使い分けます。
正確さを保ちながら情報量を整理することが、テクニカルイラスト制作の重要なポイントです。
テクニカルイラストはどのような資料から制作できるか
テクニカルイラストの制作方法は、依頼時に提供される資料によって変わります。
テクノアートでは、案件の内容に応じて2D図面、写真、実物、3D CADデータなどを利用して作図しています。
2D図面から制作する
正面図・側面図・平面図などの2D図面を参考にしながら、製品形状を立体的に把握してイラストを制作します。
従来から行われてきた代表的な制作方法で、製品の構造を理解しながら必要な部分を描き起こします。
図面だけでは判断できない箇所については、写真や追加資料などを併用することもあります。

写真や実物から制作する
図面が用意されていない製品では、製品写真や実物を参考にして制作することもできます。
ただし、写真では確認できない部分や内部構造などがある場合には、別角度の写真や補足資料が必要になります。
説明する内容に応じて必要な資料を確認しながら制作します。
3D CADデータから制作する
設計段階で作成された3D CADデータを利用できる場合、製品形状をさまざまな方向から確認できます。
視点変更や部品単位での表示、内部構造の確認などが行いやすいため、複雑な製品のテクニカルイラスト制作でも有効です。
3Dデータをそのまま使用するのではなく、マニュアルで必要となる情報に合わせて線や部品、表示範囲などを整理して仕上げます。
3Dデータを活用したテクニカルイラスト制作
3D CADデータの普及によって、テクニカルイラストの制作方法も大きく変化してきました。
テクノアートでは1998年に3D CADを活用したイラスト制作の開発に着手しており、現在も3Dデータをテクニカルドキュメント制作に活用しています。
3D CADデータを利用することで、
- 任意の角度から製品を見る
- 必要な部品だけを表示する
- 外装を非表示にして内部構造を確認する
- 部品を分離して分解図を制作する
- 同じ製品データを複数の資料へ展開する
といった制作が可能になります。

また、一つの3Dデータをテクニカルイラストだけでなく、製品CG、動画、マニュアルなどへ展開することもできます。テクノアートでは、3D CADから3DCGや動画、マニュアルなどへ展開するワンソースマルチユースにも取り組んでいます。
製品写真の代わりとして使用する3DCGについては、「製品CGとは?3DCGをカタログ・説明書・WEBに活用するメリットと制作事例」でも詳しく紹介しています。
AIや3D技術が進化しても変わらないテクニカルイラストの役割
3D CADやCG、AIなどの技術が進化することで、テクニカルイラストの制作工程は今後も変化していくと考えられます。
従来は人が一から線を描いていた作業でも、3Dデータから線画を生成したり、ソフトウェアによって作業の一部を自動化したりすることが可能になっています。
しかし、テクニカルイラストで重要なのは、単に製品の形を描くことではありません。
誰に、何を、どのような順番で伝えるのか。
それを考え、
- どの視点を使用するか
- 何を表示するか
- 何を省略するか
- どこを強調するか
- どの工程で図を分けるか
を判断する必要があります。
制作手段が変化しても、製品情報を理解し、ユーザーに伝わる技術情報へ整理するというテクニカルイラストの役割は変わりません。
テクノアートのテクニカルイラスト制作
テクノアートでは、1971年から製品イラストの制作を受注し、ユーザーズマニュアル、整備マニュアル、解説書などの制作に携わってきました。その後、アナログ制作からデジタル制作へ移行し、3D CADを活用した制作技術の開発にも取り組んできました。
現在はテクニカルイラストだけでなく、
- マニュアル企画
- テクニカルライティング
- 編集・デザイン
- 3Dコンテンツ
- 3DCG・動画
- 多言語翻訳
などを含め、テクニカルドキュメント制作全体に対応しています。
イラストだけを単独で制作する案件はもちろん、取扱説明書やサービスマニュアル全体の制作工程の中で、文章・図版・レイアウトを連携させることも可能です。
長年培ってきたテクニカルイラストの制作技術に、新しい3D技術やデジタル制作環境を組み合わせながら、製品情報を分かりやすく伝えるための表現を提案しています。
まとめ
テクニカルイラストは、製品の形を描くだけのものではありません。
製品の構造や操作方法、作業手順などを整理し、ユーザーが理解しやすい形に変換するための技術表現です。
取扱説明書、サービスマニュアル、組立説明書、施工説明書、パーツカタログなど、目的によって求められる表現方法は異なります。
また、現在では2D図面や写真だけでなく、3D CADデータを利用することで、複雑な製品構造や分解図なども効率的に制作できるようになっています。
制作技術が進化しても、
「正確な製品情報を、ユーザーに分かりやすく伝える」
という目的は変わりません。

テクノアートでは、長年のテクニカルイラスト制作で培ってきた技術と、3Dデータをはじめとする新しい制作手法を組み合わせ、用途に応じた技術図版を制作しています。
テクノアートのテクニカルイラスト制作事例や関連情報は、「テクニカルイラスト制作の事例とノウハウ」でも紹介しています。
テクニカルイラストやマニュアル制作についてのご相談は、テクノアートお問い合わせフォームからお問い合わせください。
2026年9月3日更新
企画営業部 川内カツシ
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