基本教練に立ち戻り再登板するアナログ時代の道具:川内カツシ

アナログハンドワークからデジタルへ移行して今年で15年目になります。

5年目くらいまではアナログ時代の遺跡のような道具も残っていましたが、今は殆どオフィスから消えました。 辛うじて地図編集部門でライトボックスを使っているくらいでしょうか。

烏口とかロットリングとか楕円テンプレートに紙焼き機。

近年入社した若い社員はアナログ時代の道具を見た事も無ければ、名前すら聞いたことも無い道具でしょうね。大きな機械はとっくに廃棄業者に依頼して処分してしまい、小さなものは地下の倉庫へ身を隠しています。 もう二度と陽のあたる場所へ出る事は無いだろうと諦め、カビ臭い倉庫で過ごす日々。。。毎日々朝から晩まで愛用され、手入れされ、使い手の感性を紙に映し出していた栄光の日々。。。

そんなアナログ時代の道具が10年ぶりに陽のあたる場所へ呼び戻されました。

【ドラフター】

ドラフターとは(wikipediaから拝借)

製図板上にT定規勾配定規縮尺定規などの製図道具の機能を集約したアームがついている製図台のこと。アームに取り付けられた定規自体が縮尺定規になっており、正確な寸法を直接読み取りながら、同時に平行線や垂直線、正確な角度の斜線などが引ける。通常は製図板の高さや傾斜角度が容易に調整できる専用脚に据え付けられており、利用者が楽な姿勢で多様な作図や作線を効率良く作業できるように工夫されている。製図板全体が磁石になっており、傾斜した製図板上に図面の紙を固定するために金属製の薄板を使用する。

ドラフターの最大の機能は透明プラスチックなどで出来た幅の広い曲尺状の定規が自在アームに取り付けられ、その定規を製図台の図面上で平行移動できることにある。平行移動を基にして大きな図面の任意の位置で正確な平行を保った製図が出来る。ドラフター出現以前に広く使われたT定規は縦と横の線を平行移動して得るための器具である。ドラフターは曲尺状の定規は文字「L」状を基本とする角度ではあるが、文字「へ」や「く」状など任意の角度に設定でき、そのまま平行移動でき、任意の角度の正確な平行性を持つ図面を画ける器具である。

90年代前半ごろまでは製図の実務の世界で広く利用されたが、CADによる製図が主流となった時点では、工業高校や大学の工学部などにおいて、製図の初学者教育のために教育機関の既存のドラフターが使われている状態である。(拝借おわり)

とあるように、当時は大活躍だったのです。現在でもドラフターを使用している設計会社や製図会社は多く残っていると聞きます。

さて、このドラフターを何故今頃になって倉庫から呼び戻したのか?ですが、若手イラストレーターの基礎教育に一肌脱いで貰うためです。

弊社の主力業務の一つであるテクニカルイラスト製作においては、2次元図面から書き起こすテクニックが必須です。今では設計ツールも2DCADから3DCADへほぼ移行している状況で、パーツカタログなども紙図面から書き起こす機会もグンと減りました。しかし、テクニカルイラスト作図の基本は2次元の紙図面から形を読み取り、立体図を頭の中でイメージし書き起こす事に有ると考えます。便利なアプリケーションやプラグインなどが市場に出ていますが、それらを有効に活用するにも基本が身についてこそだと思うのです。

製品マニュアルや他社からの流用データに、どう見ても不自然なイラストを見る事がありますが、それらの殆どは作図の基本を身につけていないイラストレーターが書いたものだと思います。

というわけで、テクノアートでは今日から新人の教育にドラフターを再登板してもらい、みっちり基本を身体に覚え込ませようと思います。

2010年4月14日
株式会社テクノアート 企画営業部
川内カツシ