名刺にドラマ有り-2:川内カツシ

スティーブ・ジョブスの訃報から一夜明けてもTwitterやFacebook、mixi、blogなどでは彼が残した功績を称えるコメントが多い。

並べるのはおこがましいし恐れ多いが少なくとも同じ時代に生きている事は光栄だし素晴らしいと思っている。

私は当時彼が開発にかかわったとされるMachintoshを今の会社が導入し、アナログからデジタルへの移行を開始した時期に転職した。

それまでは手書きで線画を書いていた時代だ。線幅が太くなったり細くなったりしない直線を書くのに3~5年はかかるとされた時代。。。。ところがアメリカから渡ってきたその箱を使うと、今日初めて操作をする人が、僅か数秒で直線を書くことが出来、線幅も自由自在、Rも任意の角度で、歪みもチョチョイノチョイ。。。。友人の家でデモを見せて貰いビックリ仰天して帰ってきた社長は、帰り道の事を全く覚えていなかったそうである。

そのくらい衝撃を受けたMachintoshだが、決断は早かった。 「これからはコンピューターでイラストを描く時代だ」そう悟った社長は国内の代理店を通じてMachintoshを購入した。当時は7ケタする高価な買い物だったのにだ。 プリンターもフォントもソフトウェアも全てがバカ高かった。 しかし、物怖じせず突き進んだのには経験による経営判断と、息子(現専務)を筆頭に次代を担う年若い従業員への想いが強かったに違いない。

かくしてデジタル化への道は開かれ、私たちは前へ前へと歩みを進めていったのである。そんな中での新規開拓営業。 私は期待に胸を膨らませて飛び出ていき、リストアップした企業(主に印刷業界、中小の製造メーカー)を一つ一つ訪問営業していった。。。

すると予想に反して世間の反応は良くない。 どうして? 今までのように紙焼きしなくても良いし、早いし、コスト下がるし、レイアウトまで出来ちゃうんだぜ!?
最初は「顔が強面だから」などと自分を責めても居たのだが、どうやらそうでも無いらしい。。。
中には「いやいや、うちそんなん買わへんから」とか「ワープロで十分やから」「なんか良さそうやけど」 という反応が有るところを見ると、Machintoshそのものが認知されていないし、一体何が出来るの?というレベルなのだ。これは自分の営業センスが低いせいだし、それを納得させるだけの資料やトークが準備できていないと分かった。

メンタルも合わせて準備のやり直しである。

手描きとMachintoshを使って描くのとでは何がどう違うのか? そもそもMachintoshって何? これから何が出来るようになって、お客様にはどんなメリットが期待できるのか? リサーチが出来たおかげで営業ツールも充実させる事が出来た。

さぁ、仕切り直しでローラー作戦である。

早速、好反応を見せてくれた会社が有った。
吹田市にあるその印刷会社 とは今も取引をさせて貰っている。営業マン兼社長は仕事に対する情熱が半端無く、高じて暑苦しいとさえ思えるほどである。やり過ぎて歯車がずれてしまう事も有るが、見習うべき事は少なくない。

当時のテクノアートのデジタル化レベルはまだまだ駆け出しで、次から次へと課題が湧いてきてエキサイティングな時間を多く過ごしていた事を覚えている。

デザインも古めかしい当時の名刺を見ると色んな思いがこみ上げてくるのだった。

更に、、、つづく。。。。えーーーーーー!! まだ続くのかよ〜

 

2011年10月7日
企画営業部 川内カツシ